Fw:とある男性看護師の備忘録

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考える看護は楽しい。日々の疑問や学びを書き留めていこうと思います。

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抗酸化作用?:何かと話題の【水素】の可能性②

 

前回に引き続き、医療用ガスとしての水素について考えていきたいと思う。 

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水素は悪い活性酸素だけやっつけるヒーローなのだ

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 まず、細胞に3種類の別々の方法で酸化ストレスを与え、水素による影響をみたようだ。水素は細胞へのダメージが強い活性酸素(ヒドロキシルラジカル)を還元することで細胞を保護することがわかった。更に、もともと細胞保護に努めている生理的な活性酸素には影響がなかった。敵だけ退治して、見方には手を出さなかったというと当たり前な気もしてしまうが、体の中でそれができるやつを探すのは大変なことだろう。

 この研究には続きがあって、ラットの脳の一部を虚血状態にしてから再還流させることで、酸化ストレスによる脳損傷を誘発する。そこに、水素ガスを吸引させるとなんとびっくり、酸化ストレスの影響が緩和され脳損傷を予防することができた!ということのようだ。ラットさんおつかれさま。

 

 水素が培養した細胞やラットに対して何やらいい効果を発揮したことがわかった。だったら人間にもいいんじゃん!ってことにいきなりなったりはしない。そこで、人間に対しても実験して見たというのが次の報告だ。

 

心停止後症候群(PCAS)に対する水素ガス吸引の可能性と安全性

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 この研究では、心肺停止状態から心拍再開に至った5人の患者に対して水素吸入と目標体温管理(TTM)を実施したところ、4人は昨日予後が良かったですよということらしい。ここで大事なのはどうやら有害事象は起こってないようだということ。5人中4人の予後が良かったわけだが、TTMの効果かもしれないしそれ以外の要因かもしれない。とりあえずもう少し大きなデータを取る必要があるけど、とっても良さそうだということはわかったみたいだ。

 

対象となった患者は

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 上記の画像は文献の中身だ。少し細かく結果を見てみると、転機が良かった患者の年齢や疾患は様々。いずれも目撃者あり。バイスタンダーCPRは1名だけ無かったようだ。しかし共通して初期波形がVFであり、Asysだった一人は90日を迎えることはできなかった。蘇生後のGCS3−7。と考えるとすごく条件がいい患者が集まったわけでもなさそうだが、すごく悪いわけではなさそうだ。

 いずれにしても90日後にはCPC1だったということは、完全復帰を意味しているし、水素ガス吸引が目立って悪さをしているとは思えないといったところだろうか。

 基礎研究の結果から素人目線で考えるとTTMとセットでという未来が思い描ける気もする。心拍再開後の治療の大きな変化となるのか、水素ガスの今後が気になるところだ。