重度意識障害(昏睡)患者のリハビリ③
前回、前々回と意識障害のリハビリについて考えたが、寄り道ばかりでなかなか答えにたどり着かない。ということで引き続き考えて見たいと思う。
AHA/ASA guideline
米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)のGuidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recoveryにおいても、重度の意識障害患者に対する示唆はされていない。
ここでは、2009年の早期リハビリに関するシステマティックレビューが紹介されており、早期リハビリの根拠を示せなかったとしている。また、AVERT studyでは3ヶ月予後の優位な低下が示されていることを取り上げた上で、リハビリの早期導入は世界的に推奨されているとしている。van Nesらによる全身体性感覚刺激に関する報告(2006)では、優位な回復を示さなかったとしている。
EBRSR
今回調べている中で、EBRSR : Evidence-Based Review of Stroke Rehabilitationに出会った。脳卒中リハビリの知見を集積し、レビューしているカナダの組織。
ここでは、重度脳卒中のリハビリテーションは重大な課題であるとしている。理由として、最も大きな障害を持つがリハビリテーションの可能性には限界があり、中等度脳卒中患者と比較して機能的な改善が得られにくく、さらには費用対効果の問題もあると。
エビデンスレベルの高い研究をするためには、規模も大きくなりその分コストもかかる。知りたいことは山ほどあっても、優先される課題とそうでないものが出てきてしまうのはしょうがないことなのか。
少し考え方を変えて見たいと思う。人間はどのように意識を保っているのだろうか。
意識を司るもの
人間は、脳幹にある網様体賦活系(RAS : reticular activating system)が機能することで覚醒を維持している。脳幹にある網様体が視床などと連携し大脳皮質に刺激を送っている。この網様体賦活系を刺激することで、覚醒を促すことができるのではないかと考えられている。
なるほど。これが身体を刺激して、意識を回復させようとする試みの根源か。
床に足をつけるということ
これも話には聞いたことがあるけどよくわからなったこと。2足歩行の人間にとって足底は唯一床と接する面であり、バランスを保持するために多くの感覚情報を得ているそうだ。床に足をつけるという行為が足底にある機械受容器(メカノレセプター)を刺激することで、大脳皮質を活性化させようということらしい。
この辺で終わりにしようと思う。
脱線しながら、結局知りたいことは知れなかったような気がするが満足した。
調べて行く中で、重度意識障害患者にリハビリをしてどうだったとか、刺激をしてどうだったとかいう症例報告や規模の小さい報告はあった。なんとなく大事だと言われている理由もわかった気がする。ガイドラインで、はっきりしていないのはそういうことだったということだろう。