重度意識障害(昏睡)患者のリハビリ②
前回は意識障害のリハビリについて調べる過程で、だんだんと脱線していってしまったので、今日こそ、リハビリについて考えてみたいと思う。
意識障害患者のリハビリについて考えてみる
本邦の脳卒中ガイドラインでは、脳卒中に対する十分なリスク管理の元にできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが勧められている。発症後早期という表現だが、リハビリテーションの開始は患者の状態により決定すると…。
また、医学的に可能なら発症から24~48時間以内に寝返り、座位、セルフケアなどの自動運動を開始することを推奨している。医学的に可能なら…。
さらに、昏睡、神経兆候の進行、クモ膜下出血、脳内出血、重度の起立性低血圧、急性心筋梗塞がある場合にはリハビリテーションの開始を遅らせる(エビデンスレベルⅣ)としている。エビデンスレベルⅣ(専門家の報告・意見・経験)?
言いたいことはなんとなくわかったけど、詳しく知りたいということで、参考文献を調べてみた。
AHCPR guidline
ここで取り上げられているのはAHCPR guidlineというもの。根拠となる研究は無いけれども専門家が勧めている。それでは、AHCPR guidlineとはどんなものか?
AHCPR : Agency for Healthcare Policy and Research(保険政策研究部門)という政府機関が、1995年に刊行したガイドライン。
該当部分を確認すると、24~48時間以内のリハビリ開始や、昏睡などがある場合のリハビリ開始遅延など、本邦のガイドラインに書かれているような内容が記載されている。
この項目では、参考文献として3つの研究が提示されているが、母数がN=63,30,112と少なく、RCTではなく、結論としても通常軍と比較した早期介入における有意差は認めなかった、或いは早期介入がよかったのか看護師の関わりが増えたことがよかったのかはわからないとしている。
現在、AHCPRは再編成されAHQR(Agency for Health care Research and Quality)という名称になっており、ホームページで上記ガイドラインを資料として公表しているものの、現在の医療行為の指針とはみなされず、記録目的でのみ提供されているとし、ガイドライン使用に起因する事象に責任を負わないとうことを明記している。
ここまででわかったことは、リハビリの早期開始はいいことだけど、場合によっては慎重に検討しなきゃいけないってこと。
それでは、意識障害患者に対する早期リハビリはどうしていけばいいのかという振り出しに戻ってしまいますが、最近の報告にAVERTⅢというRCTがある。
AVERT study
これは話題になったので知ってる人も多いと思うが、AVERTⅢでは大規模RCTにより、超早期リハビリプロトコールに沿ったリハビリ開始群と、通常リハビリ群において、3ヶ月後の機能予後が超早期リハビリプロトコール開始群で優位に低下しているということだった。
まとめると、早期リハビリしたら予後が悪化した。といことだろうか。
しかし、長期介入であり、時代の流れとともに通常群のリハビリが改良された可能性もあるのでこれだけで判断するのは難しいのだろうか。
興味深いのは、プロトコール群と通常介入群で介入時間を比較すると、プロトコール軍では通常介入群の3倍程度の時間をかけてリハビリをしているということ。
なんとなく、リハビリは時間をかけたほうがいいと思いがちですだが、この結果からはあながちそうとも言えない可能性が見え隠れしている。
AVERTⅢでは除外基準として、mRS>2や声かけに反応がない場合を挙げている。ということは、意識障害を呈している患者に対するリハビリに関しては触れていないということになる…。
またしても疑問は解決しなかった。続く…